2015年6月26日金曜日

Hero

どの年代になってもHeroと思える人はいます。小学生の時は、アントニオ猪木と星野仙一に夢中でした。中学生の時は、佐野元春と大藪晴彦、高校の時はDavid Bowie、スコット・フィッツジェラルド、カポティー、大学生の時はエドバーグとその時興味を持っていたことに関係したHeroが常にいました。社会人になってからは、心不全の中でも心機能をやり始めたので、Heroは両室ペーシングという心不全の新しい治療法を提唱しただけではなく、様々な概念を提唱してきたDavid KassがずっとHeroでした。さらに、現在世界でBest 4と考える心機能の専門家が集結しました。2015.5.29-30九州大学の百年講堂で開催されたHAKATA Cardiovascular Conference 2015です。
この会では、九州大学の砂川教授、Kass, Little, Burkoffという世界Big 4が奇跡的に集結しました。私は東京大学循環器内科の小室教授と一緒に座長をさせていただき、Little, Kassのセッションを任されました。普段あまり緊張しないのですが、8年ぶりにあがりました(笑)。




 HeroのJohnes Hopkins大学のKassとは、久しぶりなのですが、すごくいいdiscussionができました。やはりHeroでした。



心機能において、日本の凄さを世界に示された砂川教授と、拡張性心不全の立役者で、私の元Bossのリトル。



一番頭はいいんじゃないかと思うBurkoff。実は、Wake Forest大学で働いている時、LittleとBurkoffは隣のラボでよく行ききしていました。ひとつ上の階には、アンジオテンシン1-7をみつけたフェラリオ、5階上にはNOでノーベル賞を取った先生のラボもありました。


久しぶりに、子供に戻ってHero達と楽しい時間を過ごしました。

座長が終わり、すぐ札幌に移動し、北海道大学呼吸器内科西村教授の企画された日本医師会生涯教育講座にて、COPDの教育講演を200人を超える聴衆の前でさせていただきました。人生ではじめて、朝福岡、夕札幌でお話し
させていただきました。


 
 
 

2015年4月18日土曜日

新しい書籍

昨年末から2冊、医師向けの専門書を出版いたしました。1冊目は循環器の医師向けに心機能の新しい教科書を昨年9月に、内科開業医向けに息切れを訴える患者の診断治療法について12月に発売しました。おかげさまで、専門書でありますが累計8000部を超えました。

来週425日に新しい本が出ます。


http://www.amazon.co.jp/dp/4840453683
 
 
 
今回も循環器内科医向けの医学書ですが、日本の心不全を引っ張るであろう、40歳以下の先生たちに、心不全のどこに興味があるかを質問し、その想いを書いていただきました。内容ではなく、パッションを文章にしてくださいという難しい課題でありましたが、十分伝わる内容に仕上がりました。
 
循環器の先生向けの本ですが、研修医の先生にもぜひ読んでいただき、循環器特に心不全の面白さを感じて頂ければと思います。一般内科医の先生にも十分楽しめる内容となっております。

2015年2月12日木曜日

金沢で講演

 金沢大学附属病院循環器内科に心不全の講演に招かれました。この日は今年一番の寒波で、倒木のため米原から金沢行きのしらさぎが不通となりました。諦めて帰ろうと思いましたが、陸路行くことにし、車で4時間かけて予定より40分遅れの8時10分から、講演を初めました。金沢大学附属病院内にコメダ珈琲があったのには、少し驚きました。9時半までしっかりと討論ができました。


夜は地元のお酒とお魚を頂きました。地元の貝らしいですが、名前を忘れてしまいました。覚えやすい名前ってかえって忘れてしまうことがあります。


建国記念日でしたので、ゆっくり帰ればよかったので、朝いちばんで7時に兼六園に行きました。もはや、結構な人の足跡があって、驚きました。


兼六園は初めてですが、雪が似合う。観光客が多いのもうなづけます。3月14日には新幹線が開通するので、東京からの観光客も増えることでしょう。


2014年12月25日木曜日

新らしい院長の著書が発売されました。

12月24日 今年2冊目の院長の新しい本が発売されました。「息切れ」を極めるという本で、なぜ今まで通り運動できないのかという疑問から、どのような病気が考えられるか、どう対処すればいいのかという内容になっております。毎朝5時から7時の2時間3カ月かかって書き上げました。前作は、おかげさまでamazon.comのベストセラーとなり、喜んでおります。新しい本は、どのような、ご意見を頂けるか楽しみです。

2014年11月19日水曜日

拡張性心不全の考え方~ジュニア・レジデントの先生方へ~(1)

最近、執筆活動が多忙で、ブログを気づけば、一か月半も休んでいました。今朝、12月発行の新書の脱稿を終えたので、新しいシリーズを開始します。

心臓はポンプです。全身が必要な酸素をエネルギー効率よく赤血球にくっつけて血液として送り出しています。たとえば、健常人では左室に血液が10はいって、10出せるとしましょう。大きな心筋梗塞を起こした後など左室がうまく血液を送り出せない左室収縮能が落ちた心不全(収縮性心不全)の場合、血液が10はいっても2しか左室から出せないということが起こります。では、10血液が左室に入れば10出せるのに、2しか入らないから2しか出せない心臓があったとしましょう。左室の血液を送り出す(emptying)というポンプ機能は保たれているけれど、左室が血液を取り込むこと(filling)ができないので、血液を送り出すことができない病態が考えられます。左室の血液を送り出す能力を左室収縮能、左室の血液を取り込む能力を左室拡張能と言います。左室収縮能が悪ければ、血液を出せない、すなわち一回拍出量(stroke volume)をだせませんが、左室収縮能がよくても、左室拡張能が悪ければSVを出すことができない、同じような病態が起こりうるわけです。これが、典型的な拡張性心不全となります。

ただし、厳密には左室収縮能と拡張能とは密接にリンクしており、ピュアにどちらかだけ障害されているというのは少ないです。拡張性心不全で見た目の収縮能はよくても、長軸の動きが悪い心臓はたくさんあります。収縮性心不全は必ず左室拡張能は低下しており、拡張性心不全も大半は左室収縮能が低下しています。実際は、どちらの機能異常が前面に立っているかで分けているということも、覚えておく必要があるでしょう。

2014年9月30日火曜日

新刊書

心機能に関するこのブログを出版しないかというお話を頂き、9月25日初めて単著で医学書を出版しました。


 今まで、共著としては、今年だけでも3冊、今までに数十冊くらいあるのですが、単著は初めてです。心不全の中でも、どのように心不全を診るかに最も重要な要素の一つである心血行動態の本で、心不全の治療を若い先生に理論的に行っていただきたいという想いで書きました。

 初めて、担当編集者がつき、原稿を追われるように書かされ、といっても期限を破る自分が悪いのですが、本を作っていく過程は面白かったです。朝型なので、毎朝5時に起きて、7時まで執筆し、犬の散歩をして、通勤という毎日でした。後半に行く程時間がせかされていたので、前半に比べやや雑な感じがするのがお恥ずかしいところです。

 売り上げも好調で、発売から1週間目で、amazon.comの心臓で1位、循環器で2位、内科全般で9位、医学書全般で22位と好調で、循環器の先生方の指示していただいているのを、感謝しております。(http://www.amazon.co.jp/gp/product/484045003X)

 印税のことをよく聞かれるのですが、医学書で、循環器の専門書ですので、読者数が少ないので、売れたと言っても、しれているため、経費と出版社の利益を考えると最低限の印税です。書くのに費やした時間を考えると、対価としてはいかがなものかと思いますが、それ以上に重要なものがあります。

 自分の考えが正しいかどうかご批判頂けるという点です。それによって、また勉強して患者さんに還元できる。医師というのは、自分が賢くなるために勉強することが、患者さんの役に立つという素晴らしい仕事だと思っています。

 これからも、この知識を患者さんの心不全治療に有効に役立て、また若い先生達に指針となるよう講演や執筆も外来診療と併せてしていきたいと思います。

 12月に発売の新刊書の執筆に先週から5時起きで執筆しております。今度は、内科の先生全般に必要な知識をまとめていくつもりです。みなさまの引き続きのご支援お願い申し上げます。

2014年9月1日月曜日

心機能について思うこと(14)~若き循環器医へ~

院長の新しい著書で初の単著の本が9月末にでることになりました。専門書ですので、一般の方には難しいと思いますが、内科研修医、循環器研修医の先生方には、心不全をマニュアルではなく理論的に治療するための心機能を勉強する足がかりとしていただけると嬉しいです。また、開業医の先生方にも、知識のリセットになると嬉しいです。

 今日は、拡張能の中でも弛緩の話をします。

 左室弛緩を評価するときに、一番問題なのは、左室弛緩が心筋の収縮後に元々の長さと張力に戻る過程を表すだけではなく、様々な因子の影響を受けることです。左室弛緩を決めるのは主に、1) 左室心筋の弛緩、2) elastic recoil(左室の収縮能)、3) 左室後負荷、4) 左室前負荷、5) loading sequence6) 弛緩の均一性が挙げられます。

 左室心筋の収縮と弛緩は鏡面像のようなもので、収縮が悪いと必ず弛緩も悪くなります。また、左室がどれだけの距離まで収縮できるかということも重要です。バネをぎゅっと圧迫すると、離した時に慣性が働くため元の長さより長くなります。勢いよく伸びた心筋は左室の弛緩速度を速め、左室を陰圧にします。この力をelastic recoilといいます。左房と左室の圧較差を大きくすることにより、左室の充満も増強されます。左室収縮末期容積が小さくなれず、大きくなると、弛緩に要する時間が長くなります。弛緩は後負荷の影響も受けます。収縮期血圧が上がると、左室収縮末期圧が上がります。2階からものを落とすと、同じ初期速度であっても、1階から落とすより地面に到着する時間がかかるように、左室収縮末期圧が上がると弛緩時間は遷延します。実際は、左室の収縮力がいい場合はさほど影響は受けません。しかし、左室の収縮力が悪い場合は、後負荷が上がると収縮時間も延び、弛緩にかかる時間も長くなります。左室の前負荷も同様で、前負荷が増えると心収縮時間が延びるため、心不全において弛緩時間は延長します。

Loading sequenceは左室側から見た反射波の影響を示します。左室から駆出された血液の波動は、末梢の動脈の分岐部などから左室の方に反射波と返ってきますが、動脈硬化で大動脈コンプライアンスが低下すると、反射波の返ってくるスピードが速くなります。普通、反射波は拡張期に返ってくるのですが、大動脈のコンプライアンスが低下している場合左室が収縮を終わろうとする収縮末期に反射波が返ってきます。そのため、左室は休もうとしているのに反射を押し返す分余分な時間がかかり収縮時間が伸び、収縮の鏡面像である拡張時間も伸び、結果として弛緩が遷延します。

 左脚ブロックによる左室の非同期運動が、左室の収縮力を落とすことはよく知られていますが、拡張期の非同期性運動も左室の弛緩を遷延します。潜在性の心筋虚血があった場合も心拍数が高くなると非同期性運動がおこったりします。ちなみに、弛緩は速度を評価する指標が臨床上少なく時間で評価することが多いので、弛緩が悪くなるときに弛緩が遷延するあるいは延びるという言葉を使います。