2014年1月21日火曜日

心機能について思うこと(9)~若き循環器医へ~

今日は、左室の後負荷について考えてみましょう。

左室の後負荷は、末梢血管抵抗、大動脈コンプライアンス、特性インピーダンスなどいろいろあります。

左室前負荷が一定の場合、末梢血管抵抗が増加すると著明に一回拍出量(SV)は下がります。収縮末期圧が上昇し、左室の壁応力が増加し、すなわち左室に強い負荷がかかり、BNPは上昇します。臨床上、急激な末梢血管抵抗の上昇は、SVの低下をきたし、SVを上げないといけないので左室拡張末期容積を増やそうとします。しかし、前回述べたように右室や心外膜が邪魔をするとexternal constraintが働き、左室拡張末期圧(前負荷)が急激に上昇し、左房圧の上昇、肺静脈圧の上昇、肺うっ血が起こります。



ここで、末梢血管抵抗を規定するのは毛細血管ではなく、小動脈であるという認識も必要です。ですから、平滑筋のある動脈を広げるような薬剤が必要になるわけです。前負荷を規定するのも毛細血管ではなく、その後にある静脈です。

大動脈コンプライアンスは、大動脈を短軸から見た時円の中心から周りの壁を押す広がりやすさと考えてください。コンプライアンスが下がると、左室圧が低い所から駆出が始まり急激に左室圧は上昇し、収縮末期圧は上昇します。コンプライアンスが低下すると反射波が返ってくるスピードが速くなります。普通、反射波は拡張期に帰ってくるのが、左室が収縮を終わろうとするときに反射波が帰ってきます。そのため、収縮時間が伸びて、鏡面像である拡張時間も伸びて、拡張機能障害が生じます。中心動脈圧が上がっている時を考えてください。この状態を左室のloading sequenceの変化と言います。左室のエネルギーは収縮初期に効率よくなるよう規定されており、収縮末期の押し込みは想定外なので、エネルギー効率的にもよくはありません。ただし臨床上はエネルギー効率は問題ない程度の低下です。


特性インピーダンスは、大動脈が長軸方向への伸びやすさと考えてください。特性インピーダンスが下がると、駆出時に直線的な左室圧の上昇となりますが、駆出開始圧や収縮末期圧は変わらないので臨床上はあまり問題ありません。

2014年1月18日土曜日

アナウンサーとのコラボ

一昨日、元NHKアナウンサーの矢野香さんと一緒に多治見で講演させていただきました。矢野さんのお話は大変刺激的でわかりやすく、楽しかったです。

 

違うフィールドの方とのお話は、大変参考になります。先日、リッツカールトンの元社長の高野登さんと一緒に講演させていただいた時も感じましたが、職種が違っても、プロとしての取り組みの基本は同じだと思います。自分がどうかということより、相手がどうかということを考えて自分がプロとしてどう振る舞うかが重要だと思います。マニュアルができて当たり前、その後のひとつができるかどうかだと思います。来月はまた、国民栄誉賞の衣笠 祥雄さんとコラボがあるので楽しみです。



会場で、久しぶりに大学時代のテニス部の後輩達に会いました。すっかり、貫禄がついてました。

2014年1月10日金曜日

エビスビール

昔はビールが大好きだった。というか、よく飲まされたもので、アルコールが薄いビールが一番無難でしたので、“何飲む?”と聞かれると、“ビールでお願いします"って、答えていた。

夏の暑い日に冷えたビールをゴクゴクいくのは、想像しただけで、気持ちいい。

ところが、歳をとったせいか、ビールを食べるとお腹が膨れてしまって、ご飯が美味しくなくなり、外でも乾杯だけで、日本酒やワインなどの醸造酒になっている。

家でも、缶ビール半分しか飲めないので、もったいないから日本酒を少しだけ頂いている。

今回、エビスビールを頂き、久しぶりに家でビールを飲んだら、美味い。白い方は爽やかで、赤い方はほどほど苦味もある。尿酸値を気にしなければいけない世代には危険だ!

心機能について思うこと(8)~若き循環器医へ~

今日はpericardial constraint (External constraint)の話をします。

左室は右心房と心外膜に囲まれています。心外膜がないと左室は左室に流入した血液によってだらっとぶら下がってしまいます。つまり大きくなりすぎることができるわけです。そうすると、左室内腔が大きくなり、単位心筋あたりにかかる力すなわち壁応力があがり、心筋にとって強いストレスとなります。例えば、イヌの開胸してクリスタルをいれるモデルでは、心外膜を剥ぐため心駆出率(Ejection fraction:EF)50%を切ってきます。同じイヌでも、カテーテルやエコーで求めた数値と異なります。このように、正常では心臓を守るためにいる心外膜が、心不全の時には邪魔になります。

左室収縮能が落ちている左室に、急激に血液が返ってくると、心外膜を押し広げる時間がないので、心外膜と右室に押されます。それによって外因性に左室拡張末期圧(end-diastolic pressure:EDP)が上がったように見えます。これがexternal constraintです。心不全の患者でEDP8mmHg以上となれば1/3は外部からの圧迫による上昇で、実際の左室の前負荷ではないということです。



たとえば、収縮性心外膜炎のように心外膜ががちがちの場合、左室が大きくなれない。左室に返ってくる血液量は多く、EDPも上がるけど、そのEDPの増加は外部からのexternal constraintによるもので、左室固有のEDPではない。左室径は大きくならないこともあいまって、左室の壁応力はあがらないから、左室壁応力を反映するバイオマーカーのBNPが上がらないのです。

External constraintがかかっている患者において、利尿薬などで静脈還流量を減らすと、右室が小さくなり、external constraintが下がるため、一過性に一回拍出量(stroke volume: SV)が増加します。それ以上減らすと、左室のfillingが減るため、SVは次第に低下していきます。


次回は後負荷である末梢血管抵抗、大動脈コンプライアンス、特性インピーダンスについてお話をします。

2014年1月8日水曜日

モッツァレラバー

皆さん、一番好きな野菜は何ですか?

僕はトマトが大好きです。四月になると、近くの農家まで直接もぎたてを買いに行きます。

合わせとしては、モッツァレラチーズ。講演後、昔は肉食系でしたが、最近は胃もたれするので、つまみとお酒で過ごすことが多いです。

こちらは、六本木ヒルズのモッツァレラバーOBIKA。ひとりでも気楽に入れてモッツァレラが美味しい。これと泡だけで十分。

2014年1月7日火曜日

心機能について思うこと(7)~若き循環器医へ~

昨年から始めた院長ブログ。おかげさまで閲覧者が1,000人を超えてきました。反応がいいので継続していきたいと思います。

今日は、左室の前負荷について考えてみましょう?

左室の前負荷とはなんですか?前負荷は左室に入ってくる血液の容量でしょうか?左室の前室の左房の圧でしょうか?



前負荷は、左室の安静時の張力を規定する重りですので、一番近似するのは左室拡張末期圧(end-diastolic pressure: EDP)です。ただし、左室拡張末期圧が8mmHgを超えると右室および心外膜からの圧すなわちpericardial constraintがかかるので、真のEDPは実際の測定値より低いので注意が必要です。

左室拡張末期容積(end-diastolic volume: EDV)は心エコーで求められるから簡便で、健常者の安静時では代用できると思います。拡張末期圧容積関係は指数関数的に変動しますから、EDPは大きくなると、指数関数にEDVと乖離していきます。また、pericardial constraintの影響を受けるので、EDPはある程度になると、EDVの増加を伴わず増加していきます。

肺動脈楔入圧(pulmonary capillary wedge pressure: PCWP)では、どうでしょうか?基本的には近似します。ただし、僧房弁狭窄症のように左房-左室間に圧較差があるときや、impaired relaxation patternのようなatrial kickが亢進した場合や、V波が増強した場合は注意が必要です。ちなみに、V波は左房の相対的なコンプライアンスを反映します。コンプライアンスが低下する状態であればV波は増高します。

臨床上では、心機能の絶対的な指標はありません。すべてのlimitationを知りながら、うまく使っていく経験値が必要なところです。だから、みなさんのうっ血の捉え方が異なるのではないでしょうか。

次回は、話が出たので、pericardial constraintについて話します。

2014年1月5日日曜日

心機能について思うこと(6)~若き循環器医へ~

右室に関して補足します。元々両生類は1心室2心房、すなわち左室が肺循環、体循環をまかなっていたわけです。なぜ可能か?それは体循環圧すなわち血圧が低いからです。身体を大きくしたり、地上から高い位置に身体を起こすためには、あるいは空を飛ぶためには高圧系が必要である。しかし、肺胞が高圧にさらされると、ガス交換に障害が生じる。太い血管にすると弾力性が損なわれ、臓器損傷が起こりやすいといったことから。何よりも肺循環系が高圧になると静脈還流圧が高くなりすぎて、心室がその負荷に耐えられえない。そこで、高圧系と低圧系と分離されたわけです。

両生類は、低圧系であったため心室壁がうすいため、心室内腔からの直接潅流で補えるため、冠動脈はありません。しかし、高圧系になると冠動脈が必要となります。大動脈から末梢ではなく、心臓の末梢から冠動脈は伸びて大動脈に繋がるといった発生形式からもわかります。ですから、低圧系の右冠動脈は、左冠動脈に比べてシンプルですよね。容積は同じはずであるのに。

このように、右室は低圧系であります。ですから、心室圧容積関係も右室と左室では大きく異なります。ここで、面白いのは、この傾きが異なるといったことより、容積を減らしていった時のV0という容積切片が0になる地点、肺でいうと残気量のようなところが右室ではかなり左、すなわち0mlに近いところにあるという点です。左室も右室も理論的には容積は同じはずです。



何が言いたいかというと、測定方法の問題で我々が思っているよりも右室のeffective volumeは大きいか、あるいは右室は定常状態においても左室に比べ負荷がかかっているかということです。右室は壁応力を逃す自由度、そのコンプライアンスが重要な因子だと思います。左室にstroke volumeを送るために容量を変幻自在に変えている。そのリミッターとなっているのが機能的三尖弁閉鎖不全症かもしれません。

竹千寿

昨晩、ご飯当番で、頂き物のカニを焼いたのですが、上の子の食べが悪く、急遽一品。これも頂き物で、冷凍室にしまってあった竹千寿のおこわ。電子レンジで温めるだけのクオリティではないですね。http://takesenjyu.jp/

竹って、抗菌作用とか消毒、脱臭作用があるって昔から
日本人は知っていたんですよね。

心機能について思うこと(5)~若き循環器医へ~

右室は苦手だなと思っている方も多いと思います。なぜ苦手なのでしょうか?

ひとつには、うまく評価できないという点が挙げられます。形態的にcoarse trabeculationを伴うcrescentic shapeで内腔のtraceが難しい、壁が薄いのでロイを置きにくい、subtricuspid areasapexoutflow tract3つの異なるパートに分かれておりどこが心機能に寄与しているのかわからないGeometric Complexityの問題が挙げられます。

しかし、考えて欲しいのは左室のstroke volume (SV)と右室のSVは同じなのです。しかし、仕事量は右室は左室の1/4以下である。すなわち、低圧系だということです。

また、左室は後負荷に比較的強いが、前負荷に弱いけれど、右室は前負荷には強いけれど、後負荷に弱いという特性があります。心筋量に依存することで、右室が低圧系でクッションになるようにデザインされているわけです。




肺高血圧症で、後負荷が極めて高い状態で、右室の壁運動の評価をすることはどれほど意味があるのでしょうか?研究は別として。負荷の程度とSVをきちんと評価さえできれば、臨床心機能としては十分ではないでしょうか。研究と臨床と別々の角度で心機能を捉えることが重用だと思います。

次回は、左室前負荷について語ります。

2014年1月3日金曜日

ペット

皆さんは、イヌ党ですか?ネコ党ですか?それとも別の動物?

私は、イヌが大好きです。子供の頃より、コリー、ダックスフンドを飼っていました。アメリカで仕事していたときもラブラドール・リトリバーとブルドッグが間違ってできてしまった子イヌで引き取り手がないので、一緒に住んでいました。イヌの信用しきった顔に父性が刺激されます。ただ、ペットロス症候群ではないけれど、赤ちゃんから見ている子供のようなイヌが、寿命の関係で自分より早く天に召されるというのはつらいもので、ラブが仕事にっている間に、いなくなってから、飼わないといようと思っていました。

ペットロス症候群からの立ち直りに関しましては、日本医師会より、リーフがでておりますので、お悩みの方はご参照ください。(http://dl.med.or.jp/dl-med/people/plaza/201.pdf)

しかし、娘たちが犬が飼いたいというので、知り合いのブリーダーの方が、母イヌにするため確保しようとしていたトイプードルを2年前に見せていただきました。娘たちが、今まで見たことがないほど優しい顔をしていたので、心を打たれて、一緒に住むことにしました。

今では、私のベッドで夜一緒に寝ています。

2014年1月2日木曜日

心機能について思うこと(4)~若き循環器医へ~

右室は必要でしょうか?どうして必要なのでしょうか?

右室は健常人ではなくてもいいと思います。

右室がいるかいらないかは、右室がないときに左室が代用できるか考えるとわかりやすい。たとえば平均大動脈圧を120mmHgとすると、健常人では約1/6が肺動脈圧だから20mmHg。第2回目のシェーマで、右室を除くと血管抵抗は直列だから、左室は平均血圧140mmHgに対して駆出しなくてはいけないけど、それは可能である。中心静脈圧は容量が2倍になるけどそれくらいの前負荷には耐えられる。つまり、なくてもそうは困らない。

左室の収縮不全があるときは、後負荷の上昇に対して、拡張末期圧が上がるため、前負荷の増大に左室が耐えられない。また、肺高血圧症にて肺動脈圧が100mmHgになったとすると、左室は平均血圧220mmHgに対して駆出を行わなければいけないので、左室拡張末期容積の増大、拡張末期圧の上昇がみられる。その状態で、前負荷の倍増は耐えられない。

いづれにしても、中心静脈圧の上昇がcriticalな問題となると思われる。このようなシツエーションでは、右室が中心静脈圧を分担してもらう必要が生じる。


次回は、右室の特徴について述べる。