今日は、左室の後負荷について考えてみましょう。
左室の後負荷は、末梢血管抵抗、大動脈コンプライアンス、特性インピーダンスなどいろいろあります。
左室前負荷が一定の場合、末梢血管抵抗が増加すると著明に一回拍出量(SV)は下がります。収縮末期圧が上昇し、左室の壁応力が増加し、すなわち左室に強い負荷がかかり、BNPは上昇します。臨床上、急激な末梢血管抵抗の上昇は、SVの低下をきたし、SVを上げないといけないので左室拡張末期容積を増やそうとします。しかし、前回述べたように右室や心外膜が邪魔をするとexternal
constraintが働き、左室拡張末期圧(前負荷)が急激に上昇し、左房圧の上昇、肺静脈圧の上昇、肺うっ血が起こります。
ここで、末梢血管抵抗を規定するのは毛細血管ではなく、小動脈であるという認識も必要です。ですから、平滑筋のある動脈を広げるような薬剤が必要になるわけです。前負荷を規定するのも毛細血管ではなく、その後にある静脈です。
大動脈コンプライアンスは、大動脈を短軸から見た時円の中心から周りの壁を押す広がりやすさと考えてください。コンプライアンスが下がると、左室圧が低い所から駆出が始まり急激に左室圧は上昇し、収縮末期圧は上昇します。コンプライアンスが低下すると反射波が返ってくるスピードが速くなります。普通、反射波は拡張期に帰ってくるのが、左室が収縮を終わろうとするときに反射波が帰ってきます。そのため、収縮時間が伸びて、鏡面像である拡張時間も伸びて、拡張機能障害が生じます。中心動脈圧が上がっている時を考えてください。この状態を左室のloading
sequenceの変化と言います。左室のエネルギーは収縮初期に効率よくなるよう規定されており、収縮末期の押し込みは想定外なので、エネルギー効率的にもよくはありません。ただし臨床上はエネルギー効率は問題ない程度の低下です。
特性インピーダンスは、大動脈が長軸方向への伸びやすさと考えてください。特性インピーダンスが下がると、駆出時に直線的な左室圧の上昇となりますが、駆出開始圧や収縮末期圧は変わらないので臨床上はあまり問題ありません。