今日はpericardial
constraint (External constraint)の話をします。
左室は右心房と心外膜に囲まれています。心外膜がないと左室は左室に流入した血液によってだらっとぶら下がってしまいます。つまり大きくなりすぎることができるわけです。そうすると、左室内腔が大きくなり、単位心筋あたりにかかる力すなわち壁応力があがり、心筋にとって強いストレスとなります。例えば、イヌの開胸してクリスタルをいれるモデルでは、心外膜を剥ぐため心駆出率(Ejection
fraction:EF)は50%を切ってきます。同じイヌでも、カテーテルやエコーで求めた数値と異なります。このように、正常では心臓を守るためにいる心外膜が、心不全の時には邪魔になります。
左室収縮能が落ちている左室に、急激に血液が返ってくると、心外膜を押し広げる時間がないので、心外膜と右室に押されます。それによって外因性に左室拡張末期圧(end-diastolic
pressure:EDP)が上がったように見えます。これがexternal
constraintです。心不全の患者でEDPが8mmHg以上となれば1/3は外部からの圧迫による上昇で、実際の左室の前負荷ではないということです。
たとえば、収縮性心外膜炎のように心外膜ががちがちの場合、左室が大きくなれない。左室に返ってくる血液量は多く、EDPも上がるけど、そのEDPの増加は外部からのexternal
constraintによるもので、左室固有のEDPではない。左室径は大きくならないこともあいまって、左室の壁応力はあがらないから、左室壁応力を反映するバイオマーカーのBNPが上がらないのです。
External
constraintがかかっている患者において、利尿薬などで静脈還流量を減らすと、右室が小さくなり、external
constraintが下がるため、一過性に一回拍出量(stroke
volume: SV)が増加します。それ以上減らすと、左室のfillingが減るため、SVは次第に低下していきます。
次回は後負荷である末梢血管抵抗、大動脈コンプライアンス、特性インピーダンスについてお話をします。
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