2014年1月7日火曜日

心機能について思うこと(7)~若き循環器医へ~

昨年から始めた院長ブログ。おかげさまで閲覧者が1,000人を超えてきました。反応がいいので継続していきたいと思います。

今日は、左室の前負荷について考えてみましょう?

左室の前負荷とはなんですか?前負荷は左室に入ってくる血液の容量でしょうか?左室の前室の左房の圧でしょうか?



前負荷は、左室の安静時の張力を規定する重りですので、一番近似するのは左室拡張末期圧(end-diastolic pressure: EDP)です。ただし、左室拡張末期圧が8mmHgを超えると右室および心外膜からの圧すなわちpericardial constraintがかかるので、真のEDPは実際の測定値より低いので注意が必要です。

左室拡張末期容積(end-diastolic volume: EDV)は心エコーで求められるから簡便で、健常者の安静時では代用できると思います。拡張末期圧容積関係は指数関数的に変動しますから、EDPは大きくなると、指数関数にEDVと乖離していきます。また、pericardial constraintの影響を受けるので、EDPはある程度になると、EDVの増加を伴わず増加していきます。

肺動脈楔入圧(pulmonary capillary wedge pressure: PCWP)では、どうでしょうか?基本的には近似します。ただし、僧房弁狭窄症のように左房-左室間に圧較差があるときや、impaired relaxation patternのようなatrial kickが亢進した場合や、V波が増強した場合は注意が必要です。ちなみに、V波は左房の相対的なコンプライアンスを反映します。コンプライアンスが低下する状態であればV波は増高します。

臨床上では、心機能の絶対的な指標はありません。すべてのlimitationを知りながら、うまく使っていく経験値が必要なところです。だから、みなさんのうっ血の捉え方が異なるのではないでしょうか。

次回は、話が出たので、pericardial constraintについて話します。

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