左心房は必要なのでしょうか?
健常人では必要ないと思います。若年健常者において僧房弁での左室流入波形でA波はほとんどありません。左室が勢いよく弛緩するため、慣性あるいはLV suctionが働き、左室のminimum pressureが陰圧となるため、左室―左房圧較差が大きく、左室の充満に十分であるからです。
左房の機能は大きく分けて、1) 血液のリザーバー、2) 収縮、3) 導管、4) ANPの分泌、5) 圧受容体があります。はじめの3つのfunctionは心不全の程度によって、比率が異なります。
健常人では、左房はリザーバーであったり、導管であったりする機能が有意なので、例えばコンプライアンスのある静脈で十分です。左室充満圧が軽度上昇すると、左房はリザーバー機能が強くなり、また収縮機能いわゆるatrial kickが強くなります。なんとか左室のstroke volume(SV)を増やすために、左室に血液を送り込もうとしています。左室の充満圧がさらに上がると、左房は単なる導管すなわち通り道となるわけです。なぜ、そうなるか?それは、左房は筋肉量が少ないため後負荷に対して非常に弱く、左房の後負荷が上昇する、つまり左室の充満圧が上昇すると、左房のSVは著しく低下し、収縮機能は意味をなさなくなります。肺高血圧が弱い右室と同じですね。このように、左房は心機能が落ちたときには、ANPの分泌も加味してものすごいバックアップをしてくれるけど、進行した心不全においてはあまり役に立っていないのではないと考えられます。
心房細動になると心不全が増悪するという経験を先生方は経験されていると思います。それは、左室の充満圧が安静時に高くない時には十分考えられるので、拡張不全(HFpEF)では十分起こることですし、EFが低下していても、病態がHFpEF様であれば十分起こりうるわけです。しかし、重症の収縮不全ではそんなに、気にしなくていいかもしれません。
重症心不全でも、心房細動になると増悪するのではないか?という疑問も生じます。では、逆にatrial kickが減ったことがその誘因ですか?もともと、弱いのですよ。
心房細動になると心拍数が増加します。心不全においては、その割合が大きいです。心拍数の増加が悪さをしているかもしれません。それならばβ遮断薬で心拍数をあらかじめ押さえておけばいいのではないでしょうか?
次回は、右室は必要か?ということについてお話しします。
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